意思決定の迅速化だけじゃない! アドバイス・プロセスの「価値と効果」と危険性まで解説♪

最近、よく耳にするアドバイス・プロセス。

『ティール組織:フレデリック・ラルー 著、鈴木立哉 訳(英知出版)』で紹介された意思決定の手法です。

一部の会社では、意思決定を迅速化するために導入しているようです。

本記事では、これを深掘りして「価値・効果・危険性など」を解説します。

アドバイス・プロセスとは

これまでの意思決定プロセスでは、あなたは上司にお伺いを立てる必要がありました。

ペンを1本購入するときでさえ……

そして上司は、忙しくないときは冷静に、忙しいときは乱暴に判断を下していました。

一方、アドバイス・プロセスでは、上司にお伺いを立てる必要はありません。

これだけ見ると、1日も早く取り入れたい素晴らしい意思決定システムです。

しかし、そうは問屋が卸しません。

あなたと上司の双方……いや、社内の全員がこれを受け入れる必要があります。

シンプルな導入事例

具体的に説明するために、シンプルな事例を上げます。

まずは、あなたについて。

仮に、あなたが新たにペンを1本購入したいことを申し出たときに

上司は「在庫があるよ。買わなくていいんじゃない。」とアドバイスしたとします。

しかし、あなたは「ジェットストリームは、書き心地が違うんだよ!」と考え、

上司のアドバイスを振り切って、購入を決断したとします。

次に、上司について。

確かに、ペンは在庫がたくさんありました。

つまり上司は、あなたに正しくアドバイスしたことになります。

この事例が意味することは、

申し出の範囲内なら、あなたは何を実行してもいいのです……自己責任で!

たとえば、あなたが書き心地抜群のジェットストリームを使った結果、

「仕事の生産性が上がったことを証明」できれば、

あなたの決断は正しかったといえます。

しかし、仕事の生産性が上がったことを証明できなければ、

あなたは上司のアドバイスに従って、在庫のペンを使うべきでした。

事例の解説

これは話しをとてもシンプルに解説していますが

実際のアドバイス・プロセスでは、

あなたの提案に影響を受けるすべての関係者からアドバイスを受ける義務が生じます

このプロセスを経た上であれば、

アドバイスの内容に関係なく、あなたの提案は自由に実行できます。

「仕事の生産性が上がったことを証明」とは、たとえば人事評価などのことです。

ここで浮かび上がる問題点は、新しいペンを1本購入することで

仕事の生産性が上がったことを証明する方法ではないでしょうか。

おそらく大多数の人にとって、新しいペンを1本購入することの正当性を

上司に証明することは至難の業となります……。

しかし、たとえば「ジェットストリームのこと教えてくれて、ありがとう♪」と、

他のメンバーから具体的な喜びの声があって

直属の上司以外の「いいね」の数という評価制度を組み入れることができれば、

「仕事の生産性が上がったことの証明」になり得ます。

つまり、アドバイス・プロセスと同時に360度評価を導入すれば、この問題はクリアできます。(これは私個人が示す事例の1つに過ぎないことも付け加えておきます)

価値と効果

価値について

私は、ここにアドバイス・プロセスの価値があると考えています。

権限を与えず……

自分のことは棚に上げて……

アドバイスに従わないと、ご機嫌を損なうのに……

「経営者の目線で仕事しなさい!」という

矛盾した指導に不満を感じたことはありませんか。

アドバイス・プロセスでは、実際に権限を与え全員がこれを受け入れるので、

矛盾した指導は行われ難くなります。

さらに360度評価まで導入すれば、

アドバイス・プロセスは、意義深いものになるはずです。

効果について

アドバイス・プロセスの効果は、意思決定の迅速化の他に2つ考えられます。

1つ目は、意思決定の分散です。

仮に、あなたには部下や後輩がいたとします。

そしてメンバーの声に耳を傾けたり、判断が必要になったりします。

また、それらの人数が多ければ多いほど、

あなたの仕事を中断して対応しなければなりません。

しかし、メンバーに意思決定の権限を与えた分だけ

作業を中断することなく、仕事に集中できるようになります。

2つ目は、本当の意味で経営者の目線を持つ人材を社内に育成できることです。

最大の権限を持つ経営者をはじめ、権限に依存する上司

それを手放す勇気があればアドバイス・プロセス

働く人たちの多くの悩みを解決してくれそうです♪

2つの危険性

オモテの危険性

さて今、あなたは1つの疑念が思い浮かんでいるのではないでしょうか。

それは「自由な振る舞い」に対する恐怖です。

好き勝手に振る舞う悪意のある行動に対する恐怖です。

それは心配ご無用です。

その理由は、以下の通りです。

好き勝手に仕事ができるようになったからといって、

大きなトラブルになるような行動を取るヒトは、ほとんどいないためです。

なんだか気休めのような理由ですがビジネスの視点において、とても重要なことです。

確かに『ティール組織』の中でも、この点のトラブルは紹介されています。

しかし、全てのトラブルを回避できる完全無欠のシステムは存在しません!

もし、そのようなシステム(仕組み)を信じているなら、

少なくとも経営目線とは言えません。

経営者目線とは、状況に応じた適切な手段を見つけ出し、実行する思考のことです。

また中小企業から大企業に至るまで、実際に運用中の社内規則、販売手法など

完全無欠のシステム(仕組み)を採用していません。

これを逆手に取ったサービスさえあります。

駐車サービス市場に新規参入した「Smart Parking」や「akippa」

精算機や車止めバーを設置していません。

これは「スマホが使えるようになったから」とも考えられますが、

その背景には、緻密なビジネスモデルがあります。

仮に、登録するアカウントを1つ犠牲にする人ばかりなら、サービスは崩壊します。

しかし、そのような悪行は極めて少ないとの見立てです。

つまり、好き勝手に振る舞う悪意のある行動は少なく、

実際には悪意のある行動があったとしても

精算機などの設備投資負担を抑えることによるメリットの方が大きいため、

投資リスクを抑えたシェアリングエコノミー・ビジネスとして

今、これらの企業は急成長しています。

アドバイス・プロセスにおいても、「悪意のある行動は、少ないはず!」

経営者などが考えられるかどうかで、導入の可否は決定されます。

ウラの危険性

しかし、これを突き詰めて考えれば、危険性があるのも事実です。

特に、日本においては。

全ての関係者からアドバイスを受けた上で

自由に実行し続けた結果、失敗だらけだったらどうでしょうか。

日本の終身雇用は崩壊しつつあるものの、

日本の法律・制度・慣習などは、従業員の雇用維持を重視しています。

経営者目線で言い換えると、従業員を解雇し難いのが現状です。

このため欧米に比べて、日本の失業率は圧倒的に低水準を維持できています。

また国民性、企業文化、外国人労働者の存在など背景が違い過ぎる中で

欧米と同じように導入すると、訴訟問題に発展する危険性があります。

もちろん判決は、日本の状況に沿ったものが下されます。

まとめ

あなたは、これらをどのように解釈するでしょうか……

経営者だけでなく、従業員も同じように意思決定に悩んでいます。

1つ言えることがあるなら、みんなで会社を良くする話し合いとしては

アドバイス・プロセスは、良質なテーマではないでしょうか。

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